日々、アオハル
「名前は?」
「あんずです」
「うちのは麦太」
「麦太くん…!珍しいけど可愛い名前ですね」
「妹が付けたんだよね」
柊くんはビションフリーゼを飼っていて、妹がいる。本人から直接得た貴重な情報を真っ新な柊くん専用ページへと書き込む。
「これ、先週トリミングサロンで撮ってもらった写真」
「わあっ!まんまるで可愛い……」
「これは俺のベッドの上で爆睡してる写真」
「うぅ、寝顔が天使」
差し出してくれたスマホ画面を2人で覗き込む。次々に現れる癒しのモフモフに、緊張の糸は更に緩んでいく。
「うちのあんずも白目を剝いてるのがあって、」
写真フォルダをスクロールして、お目当ての写真を見せようと正面を向いた時。柊くんとの距離の近さに思わず息を呑んだ。
「ご、ごめんなさい」
柊くんのパーソナルスペースに近づきすぎてしまったかもしれない。
無意識のうちに前のめりになっていた身体をそっと正す。きょろきょろと挙動不審に視線を泳がせる。
視界の端に、チョコシェイクに口付ける柊くんの姿が映った。ずうっとシェイクを吸ってカップを置き直した柊くんの視線を正面から感じる。
「ねえ」
自己嫌悪に陥りそうになっていた私を、柊くんの声が止めた。