日々、アオハル

「敬語、やめてほしい」

「えっ」

「さっきみたいに気楽に話してほしい」


「俺ら同じ学年だし」と付け加えた柊くんに、数秒空けて「……はい」と答えてしまい、慌てて「う、うん」と言い直した。


「私、人見知りしやすくて……。初対面だと特に、緊張しちゃって、上手く話せない時もあるの。仲良くなれば、普通に話せるんだけど」


辿々しいタメ口に柊くんは静かに頷いてくれる。


人見知りで緊張強い、更に言えば心配性。友達やバスケ部の皆とは心置きなく話せるけれど、相手が初対面の人となると、馴れ馴れしくないかな?と毎回不安になってしまう。自分の性格が嫌いというわけではないけれど、こういうところは克服したい部分ではある。


「じゃあさ、俺と友達になってほしい」

「え……、友達、」

「友達だったら、普通に話せるんでしょ?」


目の前の柊くんは至って真剣な面持ちで、少しだけ首を傾けた。その仕草がまた私の心臓を騒がしくさせる。


友達、……ともだち。あれ?友達って、なんだっけ。


頭の中の思考回路が知恵の輪のようにこんがらがっていく。考えれば考えるほどわけが分からなくなりそうなので、「うん」と首を縦に振った。


「友達、お願いします」

「……まじ」


私の返事がまるで想定外だったかのように目を見開かせる柊くんが少しだけ可笑しくて、同じように「まじ」と返すと、彼の目尻が優しく垂れた。
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