日々、アオハル
小さく落とした声は簡単に拾われてしまう。波琉は厭らしいくらいに目尻を下げて、仏のような笑みを貼り付けている。三人は再び狂ったように声を上げる。
周りの反応から逃げるように、もう一度テーブルへと顔を埋めた。
「ていうか名前、ひなちゃんじゃなかった」
「あれ?違うの?」
「でも第一の奴らがそう呼んでたじゃん」
「なんて名前だったわけ?」
「……」
「おーい、世那」
「……教えない」
くぐもった声を出して数秒、楽しそうな声たちがどっと湧き上がった。惚気だ惚気だ、と全員が全員手を叩いている始末。
ゆっくりと起き上がり、背もたれに背中を預ける。未だケラケラとしている全員に、細めた目を向ける。
「うるせえ」
「え〜世那きゅーん。俺らにそんな悪態ついちゃっていいの〜」
「俺らのナイスアシストのおかげで2人きりになれたんじゃん。な?」
「それなのにその態度は悲しいよなー」
「それは、まあ、……ありがと」
「「「ふぉー!!!」」」
素直にお礼を口にすれば、湧き上がる何度目かの歓声。今は何を言ってもこうなるらしい。
試合に勝った時のような、いや、それ以上に盛り上がる三人衆を冷ややかに見る。
「世那、いぇい」
波琉はというと、さっきのような仏の顔とは違う、少し子供っぽい笑顔でグータッチを求めてきた。