日々、アオハル
「世那のライバルは佐野じゃなくて黒津だからね」
波琉は三田第一のバスケ部部長の名前を挙げた。
「あ〜そうじゃん。黒津との関係は聞けた?」
「聞いてない」
「そこ1番肝心だろ〜〜」
羽森さんと黒津の関係は前々から気にはなっていた。大会で見る限り、あの2人の距離感はやけに近い。
前々からその話題は仲間内でも上がっていた。
前に朝の電車で2人に出くわした時も、黒津は羽森さんの肩を借りて寝ていた。人見知りだという彼女があそこまでパーソナルスペースを許すということは、よほど親しい間柄のはずだ。
思い出すだけでもやもやの波が大きくなる。
だけど何の関係性もない俺が2人の関係を聞くのはなんだか烏滸がましくて、結局真相は分からないままだ。
「まさか麦太の話しかしてない?」
「あとは……、英語の話」
「英語?」
「英単語を覚える時に同じスペルを何回も書いてると、英語が知らない文字に見えてくるって話」
「は?」
「それと漢字も。同じ漢字書いてると、こんな漢字あったっけ?てなるよねって話で少し盛り上がった」
羽森さんとの会話をそのまま伝えると、「どんな会話だよ!」とヤジがとんできた。
「他には?」と聞かれ、羽森さんとの会話を思い出してみる。文系と理系はどっちか、得意な科目と苦手な科目、お互いのテスト日程も話したっけ。
当たり障りのない会話だったけど、羽森さんは文系で古文が得意だということを知れた。