日々、アオハル


俺の性格を誰よりも知っていて、1年以上燻り続けた俺を誰よりも近くで見ていた波琉からの「頑張った」の言葉は素直に嬉しい。


幼稚園の頃からかれこれ10年以上の付き合いがある波琉は、時に俺以上に俺のことを理解している。


1年前、バスケ部に入部して初めての大会で初めて羽森さんを見た時、柄にもなく一目惚れをした。誰にも言わないつもりで閉じ込めていた思いを、波琉はすぐに見破った。「世那、あの子のこと好きでしょ」と。


今日羽森さんに声をかけて俺をあの場に残したのも、俺1人じゃ何もできないことを分かっていたからこそのお節介だったんだろう。


あの時はまじでふざけんなと思ったけど、おかげでようやくスタートラインに立てた。今日の偶然を活かせていなかったら、友達はおろか声をかけることすらできず引退を迎えて、接点を無くして途方に暮れたまま卒業していたと思う。


「こっからは世那のペースでいきなよ。俺らはもう出しゃばらないから。頑張れよ」


心では感謝していても気恥ずかしくてそれを言葉にできない。「さんきゅ」とだけ告げると、波琉は満足そうに笑った。





家に帰ってシャワーを浴びて晩飯を食べてテスト勉強を軽くして。布団に入って目を閉じてもなお、羽森さんの控えめな笑顔が頭から離れてくれなかった。


「……やばいな」


手の届かないところにいた彼女に少しだけ触れることができたせいか、以前にも増して気持ちが大きくなってしまった。


結局俺が眠りにつけたのは、深夜の2時を過ぎた頃だった。
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