日々、アオハル
'' 柊くんに気合いを入れてもらうには甘いもの ''
他校のマネージャーである私は一生活用することのない情報ではあるけれど、柊くんの豆知識として大事に頭に叩き込んだ。
「柊くんには頑張ってもらわないとだからねー……」
「ほんとですよね。決勝は柊先輩にかかってますもんね」
2人の声のトーンが僅かに下がる。
ここでようやく背後の私たちに気付いた水戸さんは、「あっ」と少し気まずそうに笑った。そうして目線をウォータージャグへと移す。
「もしかしてそれって追加のドリンク?」
「うん。用意してたペットボトルがなくなっちゃって」
「準備いいねー。こっちも同じく飲み物全滅」
水戸さんは自販機の取り出し口から180mlのココア缶を取り出すと、他の飲み物たちと一緒に腕の中に抱え込んだ。
「1種類だけスポドリが売り切れてるけど、他はまだあるよ」と場所を移動しながら教えてくれた。
「決勝戦、楽しみだね」
「うん。楽しみ」
「じゃあまたね」と笑う水戸さんに「またね」と返して、ペコペコと会釈をする後輩に同じく会釈を返した。
私の横を通り過ぎた水戸さんの左手首には、お守りだと言っていたリストバンドが付けられていなかった。