日々、アオハル
「でも驚いた。手首を庇わないようにしてたし、普段通りの動きをしてたつもりだったんだけど」
目を伏せたまま、柊くんは自嘲的な笑みを浮かべる。
「まあ、そりゃそうだよな。あんな散々なプレーしてたら、全員気付くか」
独り言のように柊くんは呟く。赤く腫れ上がる手首と同じくらい、その笑みは痛々しく見えた。
"守ってあげたい"
咄嗟にそんな言葉が頭を過ぎった。男の人に対して、こんな気持ちを抱くのは初めてだった。
「うちの皆は、柊くんの怪我のこと、気付いてなかったよ」
「え?」
「本調子じゃないことは分かってたみたいだけど、怪我のことは誰も気付いてない」
顔を向け直した柊くんと、再び視線が重なる。
「気付いてたのは、多分、私だけ」
リストバンドの理由には気付かなかったけれど、怪我のことはもしかしたら……とは思っていた。
「なんで……?」
試合中の柊くんはドリブルをする時も、シュートを打つ時も、痛そうな素振りは一切見せていなかった。こんな怪我を負いながらも、ラストにはスリーポイントを決めようとさえしていた。
だからこそ、三田第一の皆は柊くんの怪我に気付いていなかった。ただ調子が悪いだけだと思っていた。