日々、アオハル
「――あ、いた!柊くん!」
背後から聞こえた声にビクっと肩が上がった。咄嗟のことに驚いて、握られていた指先を思わず引き抜いた。
振り向いた先、柊くんから目線をずらした水戸さんは「え?羽森さん?」と驚いたように目を丸めていた。返す言葉が見つからず、唇を結んだまま会釈をする。
「柊くんのこと皆探してたんだよ?」
「あー……ごめん。手、冷やしてた」
「ねえ、やっぱりちゃんと手当てさせてよ」
足早に近付いてくる水戸さんに、柊くんは「いや大丈夫」と平坦な声を落とした。
「柊くんの大丈夫はもう信用できないよ。悪化してるんじゃない?よく見せて」
「そうじゃなくて、」
言葉を一旦区切った柊くんは、私がテーピングしたばかりの右手を水戸さんへと向けた。
「羽森さんに手当てしてもらったから」
一瞬、水戸さんの眉間に皺が寄ったのを私は見逃さなかった。
他校のマネージャーに余計なことをされて、気分が良くなかったのかもしれない。
「あの、ごめんなさい。私が勝手に手当てしちゃって……」
「いや、それはちが」
「ありがとう。羽森さん」
柊くんの言葉を遮るようにして、水戸さんは口を開いた。口角を上げたまま、私から柊くんに視線を移す。