日々、アオハル

「私これから先生の車で学校に戻るから、その前に病院に乗せてってもらお?早めに診てもらったほうがいいと思う」

「大丈夫。ちゃんと自分で行くから」

「本当に?絶対に行ってよ?」

「うん」

「それと、大河原くんたちのところにも早く行ってあげて?柊くんが見つかるまで待ってるつもりだよ」


水戸さんと話している時の柊くんは、どこか淡々としていた。同じチームメイトとして心を許しているからこその態度なのかもしれない。


「あの、じゃあ私もそろそろ……」


部外者の私は立ち去った方がよさそうだと判断して、声を上げた。確かに声を上げたのだけれど、言葉が途中で詰まった。


一歩後ろにいる柊くんが、私の指先に触れたから。


まるで、"どこにも行かないで" と母親の服を引っ張る幼児のように、柊くんは弱い力で右手の指先を掴む。


位置的に見えていないのだろうか、水戸さんはこれに気付く様子はない。


「波琉にはこの状況を伝えておいてもらえると助かる」

「この状況って?」

「三田第一のマネージャーの子と一緒にいた。そう言えば伝わると思うから」


水戸さんは困惑の表情を浮かべていた。沸騰寸前の私の頭の中にもはてなマークが浮かぶ。


私と一緒にいたと言って、一体何が伝わるのだろう。
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