日々、アオハル
――柊くんのこと、ずっと見てたから分かったの。
「あの時から、ずっと見てたんだ。羽森さんのこと」
俺も同じだと伝えたかった。
「俺も、羽森さんのことを目で追ってた」
大会の度に羽森さんの姿を探した。両手にドリンクを抱えて走り回ったり、ベンチに戻るメンバー1人1人に笑顔で声をかける羽森さんの姿を目で追っていた。
さっきの羽森さんの言葉が俺の心を救ってくれたように、羽森さんの行動に心が救われた奴はたくさんいるはずだ。
「チームのために一生懸命頑張って、チームの原動力になってる羽森さんも、俺はすごいと思う」
「っ」
「優勝、おめでとう」
俺を見上げる羽森さんの瞳は少し潤んでいるようにも見えた。
「ありがとう。柊くん」
控えめで優しい笑顔に、胸がまた苦しくなった。
羽森さんとその場で別れた後、体育館の外壁に寄りかかりながらずるずるとしゃがみこんだ。目の前の膝に顔を埋める。
名残惜しく離された左手はまだ熱をもっている。さっきまでの出来事が都合のいい夢なんじゃないかと馬鹿げた考えが生まれたけど、テーピングの巻かれた右手の痛みが現実だと教えてくれる。
痛いのは右手だけじゃない。
羽森さんの優しさを真正面から受けて、胸が痛いくらいに苦しくなった。
羽森さんの優しさや心の綺麗さを知るたびに、より強く惹かれていく。外から感じているだけだった優しさに直に触れてしまった俺は、これ以上気持ちを隠していることはできそうにない。
「やばい……まじで好きすぎる」
1人小さく呟いた声は、生温い風に乗って遠くへと消えていった。