日々、アオハル
episode04.
秋も深まる10月。冬服へと衣替えが完全に移行し、長袖シャツにグレーのカーディガンがデフォルトとなった。
暑すぎず、寒すぎず、過ごしやすい時期ではあるけれど、時折ひんやりとした風をカーディガン越しに感じる。
駅から学校までの道のりを歩いていると、ふわっと甘い金木犀の香りが漂ってくる。周りの木々は色付き始めていた。
ほっと心が落ち着く秋は、私の一番好きな季節でもある。
食欲の秋、芸術の秋。読書の秋。そして、
「スポーツの秋だああああああ!」
朝の教室に一際大きな声が響いた。
「秋山うるさーい」「大声出すのは応援の時だけにしてよね」と、女子たちからの野次が飛んでいる。教室内の雰囲気はどこか浮き足立っていた。
それもそのはず。今日は秋の一大行事、体育祭の日。
黒板には "三田第一体育祭" "2-3優勝!"の文字が大きく書かれていて、教室はクラスTシャツのパステルピンク一色に染まっている。
体育祭や文化祭の時に限り、先生たちの目は緩くなる。多少の化粧やヘアセットにも目を瞑ってくれるので、女子たちはいつにも増してキラキラとしている。
教室の後ろでは、美容師志望の亜子ちゃんが皆のヘアアレンジをしてくれていて、その場所は小さな美容室と化していた。
「は~いひなちゃん!完成したよお」
亜子ちゃんに手渡された手鏡をのぞくと、私の頭の上には大きなお団子が乗っていた。