日々、アオハル
「でもさあ、黒津くんに牽制されたからひなちゃんにハチマキもらうのは無理だ~って男子たちが話してるの聞いたよ?」
「ハチマキ……?」
「そう!このハチマキ」
そう言って亜子ちゃんは自身の頭に付けているハチマキを指さした。Tシャツと同じようにハチマキもクラスごとに色が揃えられていて、中央にはそれぞれの名前が刺繍されている。
カップル同士でこのハチマキを交換したり、好きな人のハチマキをもらうという ''ラブイベント''は 体育祭の定番になっている。
「それは多分、私が人見知りだから、光希が気を遣って私に男子を近付けないようにしてるんだと思う」
見知らぬ男子に話しかけられるのはあまり得意ではない。それを知っているから、光希は過保護な対応をしてくれているんだと思う。
皆の求めている答えを差し出すことができず、少しばかり申し訳ない。
「じゃあさじゃあさ!ひなちゃんは好きな人いたりしないの?」
「えっ、好きな人……」
話が急に別方向へと変わり、言葉が詰まる。好きな人と言われてすぐ、頭の中に浮かんだのは柊くんの顔。
「(ちがうちがう。柊くんは、憧れの人)」
自分に言い聞かせるように、心の中で唱える。
「……」
「え、まってまって?その反応は羽森ちゃん絶対好きな人いるじゃん!」
「いや、ちが、」
「えーんかわいい~。何組の人?もしかして先輩?いや後輩?」
「ちがう。ちがうちがう、」
「まさかの他校生?!」
「ちがうちがうちがう」
皆からの尋問は、それからしばらく続いた。