日々、アオハル

笑った顔をこんなに間近で見るのは初めてで、思わず目を丸めた。


「いや、ごめん。それだと "ひなな" になるなって思って」


頬が緩まった顔と柊くんが口にする "ひなな" の響きが可愛くて、きゅっと胸が鳴った。


「(ひな、と、7で、ひなな。なるほどね)」


これ以上心臓が大暴れしないように、せめて頭の中だけでもと冷静を装う。


「わたしの名前、ひなな、、、じゃないよ?」

「知ってるよ」


柊くんはもう笑ってはいなくて、いつもと同じ落ち着いた表情が目の前にはあった。


「雛夏ちゃん」

「……」

「でしょ?」


真っ直ぐ瞳を見つめられて、ぼんっ!と心臓が爆発した。


少しでも気を抜けば椅子から崩れ落ちてしまいそう。自分がどんな表情をしているかも分からない。


とにかく必死に、粉々になった心臓をかき集める。


不審に思われないように、何か、何か言わないと。


「正解、です」


瀕死状態の私にはこの言葉が精一杯だった。



「俺も羽森さんと一緒だよ」

「え?」

「俺も7番」


そう言った柊くんは、背中を私へと向けてくれた。
そこには "SENA" と "7" がプリントされている。


「(お揃いだ、嬉しい)」


HINAとSENAの文字もなんだか似ている気がして嬉しい。
< 76 / 95 >

この作品をシェア

pagetop