日々、アオハル

「"せなな" だね」


心臓の2/3が回復し、少しだけ余裕が出てきたから、柊くんの真似をしてみた。口にしてみると、''せなな'' という響きが思ったよりも可愛くて、ふふっと口元が緩んだ。


「俺の名前、せなな、、、じゃないよ」

「知ってるよ」


さっきと似たような会話がリピートされる。


「……」

「……」


私の次の台詞を待つ柊くんは、何かを期待しているような瞳を向けてくる。


「……世那、くん」


初めてその名前を口にしたら、なんだか胸が温かくなった。もう1度、その名前を呼びたくなって、黙ったままの柊くんに視線を合わせて口を開いた。


「世那くん」

「……正解です」


一拍おいた後、柊くんは呟いた。そして視線がゆらゆらと下降する。照れたように目を伏せる柊くんの表情に、また心臓がぎゅっとなった。



「俺ら、なんの話してんだろうね」

「ひなな、、、とせなな、、、の話?」


「わけがわかんないよね」と笑う柊くんの笑顔につられるように私も笑みがこぼれる。


楽しいな。幸せだな。心の中では今、2つの気持ちがぎゅうぎゅうとおしくらまんじゅうしている。
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