日々、アオハル

「羽森さんは何に出たの?」

「バレーボールだよ」

「バスケじゃないんだ」

「私、マネージャーなのにバスケは全然できなくて…。というか、運動全般苦手なの」

「あー、なんか分かるかも」

「えっ」


時間が経つにつれて、柊くんとの会話のラリーもスムーズに続くようになってきた。だけど時間が経つということは、お別れも近づいているということ。


「柊くんはなんの競技?」

「俺はサッカー」

「サッカーも得意なの?」

「いや、全然。部活と同じのは出れないし、サッカーならボール追ってるフリしてサボりやすそうかなと思って」

「柊くん、バレないようにサボるの上手そう」

「えっ」


一駅、二駅、電車も時間通りに進んでいき、柊くんの降りる駅は次となった。


楽しい時間ほどあっという間に過ぎてしまう。20分ほどのこの時間も、体感にすれば1分にも満たないくらいだ。


だけど今は、"寂しい" よりも "嬉しい" の気持ちの方が大きかった。普段は知ることのできない柊くんの高校生活の一部を垣間見れた気がしたから。


『次は――、次は――』


止まっていた電車が動き出して、次の駅のアナウンスが流れる。


「(けど、やっぱり、寂しいな)」


もっと隣にいたいな。もっと話していたいな。柊くんと一緒にいると、どんどん自分が欲張りになっていく気がする。


「柊くんって、」

『――急停止します。ご注意ください』


"次の駅だよね" の言葉は重ねられたアナウンスによって消し去られる。キキーッとブレーキ音が響いた後、車内が揺れて電車の動きが完全に止まった。
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