日々、アオハル
揺れた影響で身体が横へと傾き、柊くんの身体とぶつかった。というよりも密着してしまっている。
「大丈夫?」と顔を覗き込まれたので、「大丈夫、ごめんね」と返してすぐさま柊くんから身体を離す。
「どうしたんだろうね」
薄暗い窓の向こうには民家が立ち並んでいる。こんなところで止まってしまうなんて、車内トラブルでも起きたのだろうか。
『線路内に小動物の立ち入りが確認されました。安全の確認が取れ次第、運転の再開をさせていただきます。お客様におかれましては――』
「えっ」
「……」
車内に流れたアナウンスに自然と顔を見合わせた。
安全の確認が取れ次第、運転を再開。ということは、
「(柊くんと、もう少し一緒にいれるんだ……!)」
心の中で小さく万歳三唱する。思わず緩みそうになる頬にきゅっと力を込める。
「帰るの遅くなりそうだね」
「そうだね。早く動いてくれるといいんだけど……」
疾しい気持ちを隠すように、心にもない台詞を口にする。本当はこのままずっと、動かなければいいのにとさえ思ってしまう。
「俺、これで2回目。動物のせいで電車が止まるの」
「え、そうなの?」
「前の時は猪と軽く接触したらしくて、1時間以上電車で立ち往生」
「うわ、1時間以上はきついね……。そういえば小学生の時、校庭に猪が入ってきてなかなか下校できない時があったなあ」
「あ、それ俺の学校でもあった」
「やっぱりこれって田舎あるあるなんだね」
猪なのか、イタチなのか、はたまた他の動物かは分からないけど、線路内に立ち入ってくれた小動物に心からのありがとうを送りたい。