日々、アオハル
少し喉が渇いてきたので、膝の上に置いていたバッグから飲みかけのペットボトルを出した。それと同時に、ペットボトルに引っかかっていたものが、ひらり床へと落ちた。
「なんか落ちたよ」
「あ、ごめんね」
「ハチマキじゃん」
「うん。体育祭の時に着けてたの」
柊くんがそれを拾ってくれたので「ありがとう」と言って受け取る。私の手に乗せられたのは、ピンク地に金の糸で【羽森雛夏】と刺繍されたハチマキ。
「俺も同じの持ってるよ」
柊くんはそう言うと、足元に置いていたエナメルバッグを漁り始めた。
「これ」
「わ、ほんとだ」
柊くんの持つハチマキには水色地に白の糸で
【柊世那】と刺繍されている。
「柊くんもこのハチマキ着けてたの?」
「うん、まあ」
「(ハチマキ姿も見て見たかったな…….)」
同じハチマキを持っていることにも驚いたけど、このハチマキがまだ柊くんの手元にあることに1番驚いた。
「誰とも交換、してないんだ……、」
心の声が口から出ていた。それに気付き、はっ、と口元を手で抑えたけれど、時すでに遅し。
「交換って?」
「え……、いや、あの……」
私の声はしっかり届いてしまっていて、目の前の柊くんは首を傾げている。誤魔化しの言葉も見つからず、白状せざるを得なくなる。