日々、アオハル
「うちの学校だとね、恋人同士でこのハチマキを交換したり、好きな人からハチマキを貰ったりする人が多いの」
「あー、うちのとこも多いよ。交換してるやつら」
「やっぱり、そうだよね。それで……、柊くんが交換してないの、意外だなって思って……。あ、ほら、柊くん、モテそうだから」
柊くんの顔を直視できない。視線を手元のハチマキへと落としながら、辿々しく言葉を繋いだ。だけど反応が気になって上目でチラリ、柊くんを見る。
「彼女はいないから、交換する相手もいないよ」
柊くんは落ち着いた表情で平坦な声を上げた。
彼女は、いない。その言葉を何度も何度もなぞって、心の中で盛大に安堵の溜息を吐いた。
「でも、ハチマキが欲しいって頼まれなかった?」
「あー……それは何人かに」
「や、やっぱりそうだよね。柊くん絶対モテるもんね。柊くんのハチマキは、皆欲しいと思う」
やっぱり柊くんはモテるんだ。同じ学校に柊くんを狙っている女の子はたくさんいるんだ。
今は彼女がいなくても、これからすぐに出来てしまうかもしれない。他校の、ましてやライバル校のマネージャーの私に勝ち目なんてあるはずない。
分かりきっていたことだけど、その現実を知ってしまうと少し心が沈む。