日々、アオハル
「羽森さんは?」
「え?」
「羽森さんこそ、誰とも交換してないんだね」
「私も彼氏はいないから……」
「黒津は?」
「へ?光希?」
「……」
光希の名前を出した途端、柊くんの表情が少し強張った、気がする。どうしてここで光希の名前が出てくるんだろう。
「光希とは昔からの幼馴染なの。友達というか家族みたいな存在で。仲はいいんだけど、付き合ってるとかそういうのではないよ」
今朝、亜子ちゃんたちにも同じような台詞を言ったなあと思い出す。私と光希の関係はそんなに誤解されやすいのだろうか。
「……そっか」
柊くんは一言、ぽつりと呟いた。
ハチマキトークも終了したようで、少しの沈黙が流れる。
先ほど飲めなかったペットボトルを手に取って、ジャスミンティーに口をつけた。柊くんもまた、バッグからペットボトルを取り出していた。
プシューっと炭酸の抜ける音が聞こえる。
「炭酸、すごく抜けちゃったね」
「うん。けど俺は炭酸が抜けたほうが好き」
「どうして?」
「そのほうが甘いから」
「(本当に甘党なんだ)」
そう言ってペットボトルに口をつけた柊くんは、黒褐色をゴクゴクと喉へと流し込む。飲み終わりに一息ついた柊くんは、視線を私に向け直した。
「ねえ、羽森さん」
「なに?」
「さっき羽森さんが言ってた "皆" には、羽森さんも入るの?」
「え……?」
――柊くんのハチマキは、皆欲しいと思う
自分の台詞をもう一度思い返した。
「羽森さんも、俺のハチマキ、欲しいって思う?」