日々、アオハル

胸がいっぱいになって、瞳が涙の膜に覆われていた。


こういった ''青春のラブイベント'' は私には縁遠いものだと思っていた。


あっちゃんが野球部の彼氏とお揃いの背番号にしているのも、ふーこが先輩からハチマキを貰っているのも、すごく羨ましかった。いいなあ、と憧れを抱きつつも、私には無理なことだと諦めていた。


3年生同士で行われた男子バスケの決勝戦を見た時、試合に出ていたほとんどの先輩が自分のハチマキじゃなくて、彼女や好きな人のハチマキを巻いていた。素敵だなあ、いいなあって、胸がきゅっとなった。


私の手には柊くんのハチマキがあって、柊くんの手には私のハチマキがある。


たかがハチマキ、されどハチマキ。憧れていた夢が1つ叶ったのだ。


誰のハチマキでもいいわけじゃない。柊くんのものだから、胸がいっぱいになるくらい嬉しいんだ。


こんなことで泣きそうになっているなんて知られないように、【柊世那】の文字を一点に見つめながら「ありがとう」と言うと「俺こそありがとう」と優しい声が返ってきた。
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