日々、アオハル

調子に乗るついでにもう一つ。私には柊くんに聞いてみたいことがあった。


「柊くん」と名前を呼べば、「ん?」と優しい声と瞳を向けてくれる。嬉しい。


「それ……」と柊くんの首元にずっとかけられていたヘッドホンに目を向けた。


「柊くん、毎朝それ付けてるよね」

「ああ、うん」

「いつも、どんな音楽を聴いてるの?」


ずっと、ずっと、気になっていた。知りたいと思っていた。柊くんはどんな音楽が好きで、どんな曲を聴きながら毎朝窓の外の景色を眺めているんだろうって。


私はこれといって音楽にこだわりはない。流行りの曲は聴くけれど、特段好きなアーティストがいるわけではない。


だからこそ、柊くんの好きな音楽に染まってみたかった。


「最近の曲はあんまり聴かないんだ。少し昔の邦楽が好き」

「少し、昔?」

「うん。平成初期くらいの曲。俺らの生まれる10年以上前かな」


そう言って柊くんは、一番好きなアーティストだというロックバンドを教えてくれた。そのバンドはとても有名で、私も名前だけは知っていた。
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