日々、アオハル

「その人たちの曲で、柊くんのおすすめ、教えてほしい」


名前は聞いたことがあるけど、その人たちの曲はあまりよく知らなかった。柊くんのおすすめの曲でプレイリストを作成して、たくさん聴きたい。


頭の中で曲のピックアップをしているのか、柊くんは左上を向きながら「んー……」と考え始めた。


その横顔に見惚れていると、ふいに柊くんがこっちを向いた。その流れで柊くんは、首に下げていたヘッドホンを外す。外されたヘッドホンが私の顔へと近付いてくる。


そのままそのヘッドホンが、私の耳に被さった。


ここまでの一連の動きが、スローモーションのように見えた。


そうして柊くんはズボンのポケットからスマホを取り出すと、なにやら操作し始める。


「この曲なら、多分聞いたことがあると思う」


少しこもった柊くんの声が聞こえて数秒後、イントロが流れ始めた。


「(あれ、ほんとだ。なんか聞いたことあるかも)」


聞き覚えのあるイントロからAメロに入り、歌い出しの声を聞いてすぐ、「あっ!」となった。


「知ってる、聞いたことある!」

「でしょ?この曲はすごく有名だから」

「中学の時、合唱コンクールで歌ったの」

「俺らは卒業式で歌った」

「これってこの人たちの曲だったんだ!」
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