日々、アオハル

優しくて爽やかなメロディに自然と頭が揺れ動く。


そんな私を横から眺める柊くんの表情が、さっきよりも柔らかいものに変わった。曲の懐かしさも相まって、胸がじわじわと温かくなって、少しだけ泣きそうになる。


"君と出会った奇跡がこの胸にあふれてる"


サビの歌詞が今の想いとリンクして、自然と口角が上がった。


「私、この曲好き」


甘酸っぱい歌詞が好きだったなあと思い出す。


「俺も好き」


緩まった目元と控えめに上げられた口角。目の前にあるのは、ものすごく優しい笑顔だった。




「(――――好き、)」


心に溢れた一つの言葉は、この曲に対するものじゃない。


「(好き、柊くんのことが、好き)」


心の奥の奥に仕舞い込んで、固い蓋をしていたつもりだった。この二文字には絶対気付かないように、"憧れ" だと自分に言い聞かせて、誤魔化しながらやってきた。


だけどこれ以上、自分を騙せない。柊くんのことが好きだと。憧れなんかじゃなくて、この気持ちは恋愛感情なのだと。完全に気付いてしまった。






「あとはこの曲。俺が一番好きで毎朝聴いてる曲」


そう言って柊くんが流してくれた曲は、最初から最後まで初めて聴く曲だった。


"きのうよりもあしたよりも 今の君が恋しいから"
"君と出会えたことを僕 ずっと大事にしたいから"


何度も出てくるこの歌詞が、私の胸に残った。
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