日々、アオハル
この話をここでして、羽森さんのお団子姿を想像されるのはなんだかモヤる。緩みそうになる頬に力を入れて、ツンと無表情を極めた。
体育祭の日のことは3人に話していなかった。いくら仲が良くとも、自分のことを進んで話すタイプではない。
そもそも羽森さんを好きになったことだって、自分から話したわけではない。自分から話すはずもない。誰にも気付かれていなかったら、この気持ちは一人で抱え込むつもりでいた。
それがどういうわけか、波琉にはすぐにバレ、次の大会であっさりこいつら3人にもバレた。
佐野曰く、「分かりにくいやつのちょっとした変化ほど分かりやすいものはない」らしい。
未だ騒がしい3人をスルーしていると右側から笑顔の圧を感じた。顔を向けると、わざとらしく目を細めて仏のような笑みを浮かべる波琉がいた。
波琉だけには話していた。羽森さんと電車で会ったことも、お団子も、連絡先を交換したことも。
それを知っていての、この含み笑顔。
なんかむかつく。
「なあ波琉」
「んー?」
「お前ってふわふわのくせっ毛が好きだったんだ」
波琉の ''拗らせ事情'' を知っているのは恐らくこの世で俺一人だ。いつものお返しにと挑発的に口元を持ち上げた。
だけどやはり、波琉の方が一枚上手。
「えー、俺そんなこと言ってた?」
わざとらしい ''きょとん顔'' を披露した波琉は、動揺する様子もなく、胡散臭い笑顔と共に俺の言葉を流した。