日々、アオハル
「クリスマスだよ」
「クリスマスがなに?」
「クリスマスを口実に、ひなちゃんのこと遊びに誘ってみなよ」
「む」
「ほら、イルミネーションがすごいところあるじゃん」
「む」
「ちょうど冬休みだし、誘いやすいと思うよ」
''無理'' と俺が口にするのを阻止するように、波琉は言葉を被せてきた。笑顔の圧が強い。
「付き合ってもないのにクリスマスは無理」
「なんで?クリスマスはカップルだけのものじゃないだろ」
「ハードルが高い。そもそもクリスマスは羽森さんに予定があるかもしれないし」
「そんなの誘ってみなきゃ分かんないじゃん」
「誘って断られたら……、しんどい」
「気持ちは分かるけど、それも誘ってみなきゃ分からないよ」
「……」
「せっかく関係が進んだのにここで止めるのはまじでもったいない」
「……」
「世那は自分の気持ちを伝えていい関係にあるんだから。ひなちゃんのことが好きなら、自分から動くべきだと思う」
波琉がここまで引かないのはなかなかに珍しい。
波琉の言う ''自分の気持ちを伝えていい関係''に含まれた意味を知っているから、その言葉が重く響いた。
ポケットからスマホを取り出し、上から5番目にあった羽森さんとのトーク画面をタップする。文字を打っては消し、打っては消しを繰り返して、ようやく短い文章が完成した。
もう、ここまできたら勢いでやるしかないか。
「断られたら、お前らのクリスマス俺にちょーだいな」
返ってきた頼もしい声たちに背中を押され、送信ボタンをタップした。