ドッペルゲンガー

「蒼生は僕たちと一緒にいたから、ベランダへは行ってないよ。」
私に悪寒が走った。
あれは、蒼生のドッペルゲンガーだった。
後ろを振り返っても、誰もいなかった。
でも、ベランダの銀色の手すりにほくそえんだ蒼生が映っていた。
実体化していないドッペルゲンガーもいることを初めて知った。
ドッペルゲンガーが現れると、その人は48時間以内にドッペルゲンガーを見つけないと死んでしまうが、蒼生は48時間がたっても元気に学校に来ていた。寒い。
木枯らしが吹くこの季節、私が通う小学校では、マラソン大会の練習をしている。
私は、マラソン大会が苦手だ。
高学年になって走る距離が長くなって、ブルーな気持ちになっている。
マラソンは寒いし、肌がかじかむし、しんどいし、苦しいし……。
私は断然、短距離走のほうが好きだ。
スタートのときは緊張するけど、すぐに終わるから。