触れないで近付かないでキミと恋をする(マンガシナリオ)
第1話
回想モノローグ:“別れよう、俺のこと嫌いなんでしょ” 

○学校・廊下(放課)
クラスの男子(モブ)に呼び止められた芹澤(せりざわ)ゆま(ヒロイン/高校1年、黒髪セミロングのおとなしめの女の子)。

モブ男子その1「体育祭のペアダンス、俺と組んでほしいんだけど」
ゆま「えっ!?(戸惑う)」

説明文:もうすぐ体育祭、メインイベントはクラス対抗応援合戦。
男女ペアになって応援ダンスを披露するんだけどー…

ゆま「えーっと、あの~…」
モブ男子その1「あ、もしかしてもう誰か他に誘われてる!?」
ゆま「ううん、そうゆうわけじゃ…」
モブ男子その1「芹澤さんモテるから早く誘おうって思ってたんだけど出遅れたかぁ~!」
ゆま「いや、まだその…っ」
深々と勢いよく頭を下げるゆま。
ゆま「ごめんなさい!!!ペアはお断りします!!!」 

○学校・教室(放課)
自分の机に座るゆま。
その前の席で振り返って話している香耶千鶴(かやちづる)(ゆまの友達/茶髪ゆるふわロングを2つに結んでいる美少女)。

千鶴「え、また断ったの!?」
ゆま「だって…」
驚く千鶴に涙ぐみながら話すゆま。
千鶴「これで何人だっけぇ?」
ゆま「…3人」
千鶴「モテモテか!」
さらに瞳を潤ませるゆま。
千鶴「そろそろ相手決めないとやばくない?練習始まっちゃうよ?」
ゆま「わかってるけど…」
ゆま「だってペアダンスするとは思ってなかったし、男女ペアだし、手繋ぐって言うし、しかも…」
ゆま、机に顔を伏せる。
ゆま「男子が女子を誘ってペア決めるって何それ~!?」
千鶴「なんで?ドキドキしてよくない?」
ゆま、半泣きで顔を上げる。
ゆま「よくない!」
ゆま(よくない!いいわけない!何その不純な決め方…!)
ゆま(男子が女子を誘うって女子に権利ないし!!) 
千鶴「でもでも!これでカップルができやすいらしいよ!」
ゆま「…そうゆう千鶴だってまだペア決まってないよね?私より断わってる人数多いじゃん」
目を細めて千鶴を見るゆま、両手を握って瞳を輝かせて上を見る千鶴。
千鶴「あたしは由比くんがいいの、由比くん以外は嫌!!」
ゆま「千鶴、由比くんのファンだよね」
千鶴「クラスで1番カッコいいでしょ由比くん♡」
ゆま「カッコいいのは、カッコいいけど…」

説明文:由比将生(ゆいまさき)(色素の薄い髪と肌を持ち合わせた整った顔の美少年)くん、みんなが騒ぐほどカッコいいのは確かなんだけど… 

窓際の席で座って頬杖をつきながらぼぉーっと窓の外を見ている由比。
ゆま(クール過ぎてあんまり喋ってるところを見たことがないんだよね。あとちょっと目つきが怖い…って私は思う。)
千鶴「ゆま、もし由比くんに誘われたら断ってくれる?断ってもらってもいい??」
手を合わせながらうるうるした瞳で訴える千鶴。
ゆま「…大丈夫、断るよ」
ゆま「でも断るのも毎回大変なの…っ!」
千鶴「そう?嫌って言うだけだと思うけどなぁ」

食い気味で千鶴の声に被せるように、教室中に響くような大きな声で登場する荘田零哉(そうだれいや)(金髪のロングヘアを1つにまとめた178センチの男子)

零哉「男子から誘うって男女差別じゃね!?」
ツカツカと教室へ入ってきて、ぼぉーっとしてる由比に話しかける零哉。
零哉「でも正直めっちゃおいしいか!アリだな!!(大声)」
由比「……。」
零哉「由比、もう誘った?俺まだなんだよね!」

そんな2人のやりとりを遠くから見ているゆまと千鶴。

千鶴「相変わらずすごいねぇ」
ゆま「堂々としてるよね」
千鶴「零哉は思ったこと何でも言うからね!」
千鶴「あれだけ言えたら世の中生きやすいそうで羨ましいよね~」
ゆま「ね」
千鶴「ゆまも見習ったら?」
ゆま「……。」

説明文:そりゃあ私だって、そんな風に生きていきたい。
でも別に言えないとかそうゆうことじゃないの。
言いたくないの、誰にも。

○校舎裏・昼休み 
壁際で迫られているゆま、また体育祭ペアの申し出を受けている。

モブ男子その2「芹澤ちゃん俺とペア組もうよ!」
ゆま「えっ…」
モブ男子その2「芹澤ちゃんまだペア決まってないじゃん、全部断ってるって聞いたんだけど!」
モブ男子その2「俺は!?俺ならよくない!?俺喋ったことあるし!」
ゆま「そ、そうだっけ…?」
ゆま(喋った記憶ないんだけど、喋った…?おはようって言われたからおはようって返したとかじゃない??)
モブ男子その2「だから俺と…!」

さらにグイッと近付いて壁に追いやられるゆま。目を逸らして制服のスカートをぎゅぅっと握る。

ゆま(えっと、どうしよっ。なんか目がやばいんだけど、コレどうしたら…!?)

校舎の陰から現れる零哉。
零哉「鈴木(モブ男子その2)~!芹澤さん困ってんじゃん、強要はよくねぇよ?」
モブ男子その2「零哉っ、別に強要とか…っ」
零哉「芹澤さん嫌がってる時点でもうダメに決まってんだろ。なぁ芹澤さん」
ゆま「え…あ、…ごめんなさい」

不満そうにその場から去っていくモブ男子その2。

ゆま「あの…ありがとう、荘田くん」
零哉「ん-全然!モテる子は大変だね!」
ゆま「全然、そーゆうわけじゃ…」
零哉「え、謙遜?」

少し戸惑うゆまににこっと微笑む零哉。ハッとした様子でずっと握ったままだったスカートから手を離して手のひらを見るゆま、じわっと汗をかいてスカートはしわくちゃに湿っている。
ゆま(ずっと握ってたからだ…しかもどうしたらいいかわかんなくて焦ってたから…!)

説明文:やっぱり私には… 

零哉「芹澤さんってなんで全部断ってんの?」
ゆま「え…」
零哉「あ、好きな人いるんだ!うわーっ、いいな!!」
ゆま「違うけど…」
零哉「じゃあなんで?」
ゆま(なんでって言われても…、だってできないんだもん。私だってこんなことで悩みたくないけど、どうしようもないんだもん)
零哉「絶対誰かとペアになんなきゃいけないのに全部断ってたら意味なくない?」
何も言えなくなるゆま、俯く。
ゆま「…誰かと手を繋ぎたくないの」
ぎゅぅっと手をグーにして握る。

説明文:緊張したり焦ったりするとじわって手に汗をかいて、昔からそれがすごく嫌だった。だから怖くて、誰かと手を繋ぐのが怖い。 

零哉「え、でもそれ体育祭どーすんの?出れないじゃん」
ゆま「出なくていいよ、ペアダンスは参加できなくても…」
零哉「えー、マジ!?せっかくカップルになるチャンスなのにもったいなくない!?」
零哉の声の大きさにびっくりして顔を上げるゆま。目を見開いて驚いていた。
零哉「それは絶対もったいないって!高校入って最初のチャンスだよ!?」
ゆま「……(引いた表情)。」
零哉「俺はこれで彼女作ろうかと思ってたのに!」
零哉「そんな手繋ぐの嫌なの?何が嫌なの?」
ゆま「だから…他人と手繋ぎたくないの」
零哉「じゃあ他人じゃなければいいってこと?俺と友達になる?友達なら他人じゃないよ!」
ゆま「そーゆう意味じゃない!」
あまりにしつこい零哉から逃げるように大きな声を出して走り出そうとした。だけど咄嗟に零哉がゆまの手を掴んだ。
零哉「待って!」
グッと引っ張られ、焦るゆまはさらに大きな声を出す。
ゆま「やめてよ!!!」
零哉の手を振り払って逃げるように走る。
零哉「ちょっと待ってよ芹澤さん!」

説明文:やだ!やだ!やっちゃった…っ 
荘田くんと手を握っちゃった…!
荘田くん、一瞬変な表情してた。
きっと不快に思ったからだ。
恥ずかしい、恥ずかしい…!!

零哉「芹澤さん…っ!」
追いかけて来た零哉、もう一度ゆまの手を掴む。
ゆま「ちょっと…!」
ゆま「やめてよ!何するの!?嫌なんだけどっ!荘田くんとはペア組まっ」
零哉「あ、ごめん!違う、そーゆう意味じゃない!そうじゃなくて、あの…っ」
零哉「背中めっちゃ汚れてるから教えてあげようかと思って」
ゆま「……。」
モブ男子その2に迫られていた時、校舎の壁に背中をくっつけていたその汚れが制服に付着していた。ボンッと顔を顔赤くするゆま。
ゆま(え、それを教えてくれようとしてたの!?うわっ、恥ずかしい!自意識過剰にやめてとか言っちゃった!うわ~~~っ)
さらに汗が吹き出しドキドキと鼓動までしてくるゆま。
ゆま「…ごめんなさい」
ゆま「でもこれでわかったでしょ、私が手を繋ぎたくない理由が」
一瞬下を向いて顔を上げて、零哉の方を見る。でもまた視線を逸らす。
ゆま「緊張するとね、汗が止まらなくて…それで嫌なの。手繋いだらまた気になっちゃって、それが余計に焦っちゃって…」

説明文:だから手を繋ぐのが怖い。なんて言われるかわからなくて、怖い。

ゆま「みんな引くでしょ」
視線を零哉の方に向けるとキョトンとした表情をしている。
零哉「……え、なんで?」
零哉「なんで引くの?」
ゆま「えっ、なんでって…気持ち悪いとか、思うでしょ?」
零哉「えーっなんで!?芹澤さんのどこが気持ち悪いの!?」
零哉「芹澤さんめっちゃ可愛いじゃん!」
照れるゆま。
千鶴が言っていた言葉「零哉は思ったこと何でも言うからね」を思い出す。
ゆまに近付く零哉。
零哉「みんなそんなもんじゃない?」
零哉「それにこれは芹澤さんが生きてるってことじゃん!悪いことなんかないよ」
真っ直ぐゆまのことを見つめて微笑む。
何か思い出したようにハッとしてポンッと手を叩く零哉。
零哉「あ、なるほど!これで断ってたのか!」

説明文:誰かに話したのは初めてだった。誰にも言いたくなかったから。
でも言葉にしたら変わるものってあるのかもしれない。

零哉「俺とペアにならない?」
< 1 / 5 >

この作品をシェア

pagetop