触れないで近付かないでキミと恋をする(マンガシナリオ)
第3話
回想シーン:“ゆまっ!”
隼太の呼び掛けに振り返る、何か言おうと口を開いた隼太に動揺するゆま。

〇学校・廊下
窓から外を眺めている。
千鶴「元気ない?」
ゆま「えっ」
千鶴「どうかしたの?」
ゆま「ううん…」
一瞬、昨日のことを思い出し表情が曇るがすぐに切り替える。
ゆま「なんでもないよ、ペアダンス難しいなーって考えてた!」
千鶴「ねー、ダンス細かいよね~!覚えられるかなぁ~!」
ウキウキとした顔で楽しそうな千鶴の隣で浮かない顔で頬杖をつきながら窓の外を見てる。
ゆま(また、逃げちゃった…)

昨日の回想シーン:何か言いたそうにした隼太に気付いて、先に口を開く。
ゆま「ごめん、ちょっと急いでるんだ!」
隼太の言葉を聞かないでその場から走っていくゆま。
ゆま(私は何も変わってない)
ゆま(あれからずっと…)
回想終わり 

千鶴「ゆまはなんで零哉の誘い受けたの?」
ゆま「え、別に…なんとなく、だよ?」
千鶴「えー知りたい!だって全部断ってたのになんで零哉だけOK出したのか気になる!」
ゆま「なんでって…特に何かとかないけど」
誘われた日のことを思い出す、気付いたら頷いてた自分がいた。そんな自分を不思議な気持ちで思い返す。
ゆま(たぶん初めてだったから、初めて話したから…ずっと秘密にして来たこと)
ゆま(それで…)
千鶴「零哉のこと好きなの?」
ゆま「えぇ!?」
突然の言葉に過剰に驚く。
ゆま「好きじゃない!全然好きじゃないよ!!」
千鶴「えー、そうなの?」
ゆま「そうだよ!」
千鶴「ちょっと喜んじゃったじゃん」
驚いた表情からスッと戻る。
ゆま「え…なんで?」
千鶴「だってゆまのそーゆう話聞いたことないもん」
千鶴がゆまの方を見て笑う。
千鶴「だからゆまのそんな話も聞いてみたい」
ゆま「……。」
千鶴から目を逸らして前を向く。
ゆま「…ごめん」
千鶴「え、なんで謝るの?」
ゆま「あの私…、もう恋はしないと思う」

〇グラウンド・体育の時間
ペアダンス練習

体育祭実行委員「じゃああとはペアで練習してねー!」

零哉「体育祭実行委員長と副委員長付き合い始めたらしいよ、やっぱカップル誕生率いいんだなコレ」
零哉「な!すごくね!?」
ゆま「…うん」
浮かない顔のゆまに気にせず声をかける。
零哉「(練習)始めるか!」
隣に並ぶ2人。
ゆま(これでカップルになりやすいってのはわからなくもない)
ゆま(一緒にいることも話すことも増えるし、それで距離が近付いて…って展開はあるあるっぽいし)
覚えた振り付けをなぞっていく。
零哉、軽く演目の歌を口ずさみながらダンス。
ゆま(でも私はきっと、そんなふうには…)
途中、零哉の前にゆまがいる状態になる。後ろに気配を感じて心なしかドキドキして来る。
ゆま「!」
ゆま(あれなんか…急に…っ)
前後で息を合わせたダンスの練習。
ゆま(これ、普通にあれ…だよね)
ゆま(距離近過ぎる…!)
ダンスをしながら頬を赤らめるゆま。
ゆま(ペアダンスってこーゆうものなのかもしれないけど、こうゆうのやったことないし2人の息を合わせようと思ったら嫌にでも意識しなきゃいけないし、なんかこれ…っ)
零哉「なんかさぁ…」
ゆま(やばい…!!!)
ゆま(気付かれた…っ)
零哉「めっちゃドキドキしない!?」
ゆま「………え?」
ゆまがパチクリしながら振り返ると、わぁーっと大袈裟にリアクションして若干頬を赤くしている。
零哉「やばい俺!超心臓うるさい!!」
顔を赤くして口を押されている。そんな零哉の姿を見ていたら、さっきまで同じように頬を赤くしていたのがサッと消えているゆま。
零哉「やべぇー、聞こえてたらごめん!でも全然やましい気持ちとかないから!」
零哉「いや、あるか!ドキドキしてる時点であるか!」
零哉「でもないから!!」
両手で顔を隠してブンブン左右に首を振る零哉。
ゆま「……。」
口をむぎゅってして、なんともいえない表情をするゆま。口をむぎゅってすることで自分を殺している。
ゆま(ドキドキ…私もしてたんだけど)
ゆま、少し俯く。
零哉「聞こえないフリして!」

説明文:私のドキドキは聞こえてたのかなー… 

零哉「いや、俺はじゃがいもだった!」
零哉「じゃがいもはドキドキしない!じゃがじゃがしているんだ!」
ゆま(じゃがじゃが?)
俯いていた顔を上げる。
ゆま「じゃがじゃがって何!?」
零哉「やっぱカレーのじゃがいもは存在感ある方がよくない?じゃがじゃがって感じの、ゆまは?」
ゆま「私は溶けてる方が…ってそんな話だっけ!?」
零哉「ゆま、ノリツッコミできるんだ意外」
ゆま「違う、今のはっ」
顔を赤くしながら零哉の方を見るゆまに、笑う零哉。くすくすと笑ってさっきの雰囲気とは全然違う空間になる。
体育祭実行委員「ペア練やめて合わせるよ~!」
零哉「なんかカレー食いたくなって来たな~、帰り寄ってくかな~」
笑いながらくるっと向きを変えて、集合がかかったところまで歩き出す。その零哉の背中を見つめるゆま。
ゆま「……。」
少し頬を赤くしている。

説明文:零哉くんといるのは、心地いい。零哉の隣は、気持ちがラクになれる。 

零哉を追いかけていくゆま、追い付いて隣に並ぶ。

説明文:少しだけドキドキするけど。

〇学校からの帰り道 
ダンスの振りを思い出しながら身振り手振り動かしながら歩くゆま。
隼太「ゆま?」
ドキッと心臓が鳴る。
隼太「ゆま…何してるの?」
ゆま「隼太くんっ!あのっ、これは…、えっともうすぐ体育祭だからその練習っていうか、その、それで…」
隼太「歩きながらしてたら危ないよ」
ゆま「だ、だよねー!気を付ける~!」
隼太「……。」
ゆま「……。」
隼太「久しぶりだね」
ゆま「うん…、そうだね」
隼太「元気だった?」
ゆま「うん、元気…」
お互いに何を話したらいいのかわからない空気、目も合うわさない2人。しどろもどろするゆま。
ゆま「あの、私っ」
隼太「ごめん」
ゆま「え…?」
隼太「…話しかけてほしくなかったよね」
謝るように下を向く。しばらくの沈黙後、ゆっくり顔を上げる。
隼太「ゆま、俺の事嫌いだったのに…」
ゆま「そんなことないよ!隼太くんのこと嫌いだなんてっ」
隼太「嫌いじゃないけど、付き合ってくれてたんだよね?」
ゆま「…っ」
隼太の寂しそうな顔に何も言えなくなる。
隼太「あ、好きじゃないけどか!」
ゆま「…。」
隼太「嘘だよごめん、いじわる言った」
隼太「ゆまの顔見たらなんか言いたくなっちゃって…」

説明文:あの頃を思い出す、隼太くんといた頃。私はずっとドキドキが止まらなくていつも緊張してた。 

一度落とした視線を戻してゆまと目を合わせる。真っ直ぐな瞳に目が離せないゆま。
隼太「ねぇゆまは、本当は俺の事どう思ってたの?」
口ごもるゆま。
隼太「いつも俺の事、避けてたよね」

回想シーン:ゆま“近付かないで!” 

ゆま、俯く。

説明文:そんなつもりじゃなかった。でもそんなふうに思わせてた。私のせいでー…

〇ゆま1人の帰り道 
隼太に言われたことを思い出しながらとぼとぼと下を向いて歩く。
ゆま(隼太くんはずっとあんなふうに思ってたのかな、ずっと思わせてたのかな…)
ゆま(隣にいる時もずっとー…)
うるっと瞳を潤ませる。
ふいに顔を上げた先に仲良く手を繋いで帰るカップルを見付ける。羨ましそうに見つめる。
立ち止まったまま見ていると歩いて来たカップルとぶつかって転んでしまうゆま。何見てんだよ、と言睨まれる。
ゆま「…っ」

説明文:私には無理だった。できなかった。 

ゆま、その場で泣きだす。

説明文:みんなと同じことができなくて悔しい。みんなが簡単にしてることができなくて悲しい。私だって手を繋いでみたかったよー… 

ぺたんと座ったまま泣くゆまに、現れた零哉がスッと手を差し伸べる。
零哉「ゆま、大丈夫?」
泣きじゃくった顔を上げる。
零哉「どうした!?どっか痛い?ケガでもした!?」
ゆま「零哉くん…っ」

説明文:差し出されたこの手を、私は取ってもいいのかなー…
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