ひとりだけ

マミより先にショートヘアが怪訝な顔をして、
「何、その古臭いナンパみたいなセリフ……」
と言った。



「違うよ。別にきみが答えてくれても良いんだ。……オレを、知っていますか?」

「!?」



ショートヘアは何かに気づいたらしく、目を大きくした。



「……私、頭がなんだかぼんやりしている……?どうしてここにいるのか、あなた達が誰なのか、知り合いなのかもわからない……?」

「そうだろう? なんていうか、記憶が……あやふやっていうか」



ショートヘアと銀縁メガネはお互いをまじまじと見つめて、
「なんで?」
とか、
「記憶喪失?」
と、頭を抱えている。



「記憶喪失〜? マジで?」



金髪は信じていないような口調。



「きみは何か思い出せたりする?」



銀縁メガネは金髪に問いかける。



「えー、余裕っしょ」
と、金髪は笑い、こう言った。



「オレは北田 大成(きただ たいせい)。県立L高校の二年生」
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