ひとりだけ
「北田くん……」
「いや、大成でいーよ。ってか、名字で呼ばれんの、嫌いなんだわ。特に男からはマジで」
「どうでもいいし、そのこだわり」
ショートヘアは金髪の大成に冷たい。
銀縁メガネは、
「……大成はオレを知ってる? どうしてこの部屋にいるのか、覚えている?」
と、また尋ねている。
「え……、いや、ちょっと待って。アンタのことは、なんとな〜く、見覚えがあるんだよ。いや、これはマジで」
「本当に? オレのこと、見たことがある?」
「うん。でもなんでこの部屋にいるのか、全然思い出せないかも。……待って、これが記憶喪失ってやつ?」
「だからそう言ってるんじゃん」と、ショートヘアは大成を睨む。
「……この部屋、出入り口がないよね。ってか、何もないし」
マミが部屋を見渡し、呟いた。
「そんなの言われなくても、もうわかってるよ。どうやってここに来たのか、あなたは覚えてないの?」
ショートヘアはイライラしている。