ひとりだけ

「私に当たるの、やめてほしい〜」
と、マミがぶりぶりして言うので、余計にショートヘアがイライラしたみたいだった。



「喧嘩は、やめようよ」
銀縁メガネが言う。



「ここにいるみんなで協力しなくちゃ。とにかくこの部屋から出る方法を考えようよ」

「協力? このヤンキーと、ぶりっこと?」



ショートヘアにそう言われて、大成とマミは「は?」と、声を揃えた。



「ほら、そうやってすぐ喧嘩しないで。とにかく、みんなで協力しよう」



銀縁メガネはショートヘアに辛抱強く言い聞かせるように言う。



「オレは、矢崎 信(やざき しん)。私立E学園の高等部二年生。きみの名前は?」

「……笹木 祐子(ささき ゆうこ)。県立K高校の二年生」



ショートヘアの祐子は大成とマミに、
「……カリカリしてごめん。確かに、今重要なのはみんなの協力だと思う」
と、意外と素直に頭を下げた。



マミは、
「いーよ。許してあげる。だって、まぁ、この状況にパニクらないほうがおかしいもんね?」
と、言った。
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