ひとりだけ
それに、大成の言葉にも引っかかる。
信も、マミも、祐子も。
自分の名前と在学名、学年は言えたけれど。
その他のことは言えなかった。
自分以外のこの部屋にいる人を。
覚えていない、とみんなが言っていた中で。
大成だけは信にこう言った。
『アンタのことは、なんとな〜く、見覚えがあるんだよ』
……どうして?
大成だけがなぜ、他の記憶があるんだろう?
……そんなことを考えていると。
信が、
「『ひとりだけ』って言葉に意味があるなら、どんな意味があると思う?」
と、祐子に尋ねているのが聞こえた。
(…………)
祐子は、「そうだなぁ……」と考えている。
マミが、
「仲間外れな感じ、しない? ひとりだけって」
と、挙手して答える。
大成も頷いた。
「わかる。なんか、寂しい感じする」
「でも、それだけの意味だったらこの部屋の中央に、わざわざ血文字で書く必要ある?」