ひとりだけ
気づいたら
気づいたら。
知らない部屋にいる。
床に突っ伏していた私は。
体を起こして、ぎょっとした。
手が真っ赤に染まっていたから。
……血?
辺りを見渡すと、扉も窓も無い部屋で。
白い壁には、赤いシミが飛び散っていて。
それが血しぶきだと理解するまで、時間はかからなかった。
だけど、どうして私の手に血がついているんだろう?
立ち上がって見た床に、その疑問の答えがあった。
『ひとりだけ』
……そう書いてある。
血で。
気を失っている間に、この血文字に手が触れたのかもしれない。
部屋の中。
きっと10代なんだろうと思う男女が、複数人、気を失った状態で床に倒れている。
ひとりだけ、部屋のすみで体育座りをしている女性もいた。
彼女は「うっ、うっ……」と嗚咽を漏らしている。
俯いていることから、きっと泣いているんだと思った。