ひとりだけ

メガネの有無。

信だけがメガネをかけている。

……いや、これもまた、泣き続けている彼女の顔を見ていないからわからない。



「『ひとりだけ』何かが違うって、マジ意味不明〜」
と、大成があくびをしながら言っている。



私は、泣き続けている彼女を観察してみた。



「うっ……、うぅっ……」



嗚咽を漏らして、苦しそうに泣いている。

顔を両腕にうずめて。



(…………)






そうだ、この部屋で気づいてから『ひとりだけ』、……彼女の顔だけ、見たことがない。






ずっと、顔を隠している。

だから私は、彼女のことを知っているんだろうか? と思ったんだった。



それに、彼女がみんなと決定的に違うところがもうひとつある。






彼女だけが。

白いトレーナーにデニムという恰好をしていない。






服装が、『ひとりだけ』、違う。










「『ひとりだけ』、助かるとかだったらイヤじゃない?」
と、大成が言う。
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