ひとりだけ
記憶
この部屋に時計がないから。
気がついてからどのくらいの時間が経ったのかを知ることもできず。
私の中で、不安と焦りのような気持ちがより一層強くなってくる。
ずっと泣き続けている女性の嗚咽に、少なからずイライラしていることも事実だった。
どうして連絡手段のひとつも持っていない状態なんだろう?
外部と連絡が取れたならと、考えずにはいられない。
「あぁ〜、もぅ!! 泣き止んでくれてもいいだろ、いい加減!!」
大成が頭をガシガシ搔いて、私と同様、苛立っている。
「そういうこと、言うなよ」
と、信。
「そ〜だよぅ、何か違う話でもしよーよ。気が紛れる感じの!」
「うるせぇな! お前だって本当はイライラしているくせに!! そうやって猫被るの、昔から上手だけど、オレはお前の本性を知っているんだからな!」
大成が怒鳴った。
マミはビックリしたのか、大きな目を丸くして大成を見ている。
(…………あれ?)