ひとりだけ
私は、大成をまじまじと見つめた。
私の視線に気づき、
「なんだよ! 何か文句でもあんのかよ!!」
と、更に怒りだす大成を。
「……なんで、大成は私が猫被ってるって……」
マミはそこまで言うと、何かに気づいたように黙った。
「は? はっきり言えよ!! オレは知ってるんだからな!? お前、中学の時にはすっげー悪い奴だったって!!」
「!!!」
信と祐子が顔を見合わす。
「……大成、アンタ……」
と、祐子が言う。
「……記憶、あるの?」
その言葉に「えっ」と、驚いたのは、大成本人だった。
「……本当だ、さっきまでぼんやりして思い出せなかったのに……」
大成に、信と祐子が近づく。
「どうしたら記憶が戻った!? オレにも教えてくれない?」
「いや、その前に!! この部屋で気がつく前のこと、アンタ何か覚えてない!?」
今まで比較的冷静だったふたりが、大成に詰め寄る様子が、私にはなんだか滑稽に見えた。