ひとりだけ
協力しようがしまいが、記憶が戻ろうが戻るまいが、ここから出る確かな方法がわからないなら。

ふたりの話を真剣に聞いていても、意味がない。


……そう思っていたら。



「私も、知っているの」
と、マミが言った。



私はマミを見た。

決意した目で、みんなを見ているマミを。



「知っているって……?」



祐子が注意深く、ゆっくり尋ねる。



「知っているんだ、この部屋のこと」

「えっ? だってさっき……」



祐子の顔には、信じられないと、書いてあるようだった。



「……さっき、記憶喪失だって話してたじゃない!」

「祐子と信がね」

「!?」

「私は、確かに記憶があやふやではあったけれど、記憶喪失だとは言ってないよ」



祐子が眉間にシワを寄せて、
「なら、そう教えてくれても良かったじゃない!」
と、怒った。



「なんで?」



マミが問う。
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