ひとりだけ

「なんで、教えなくちゃいけないの? あなたのことを覚えていないのは事実だし、もしくは知らない人かもしれないでしょう?」

「……? 何それ、そんなの私だって!」






「祐子のことを信用してもいいって保証が、どこにあるの?」






マミの言葉に、祐子の顔が怒りでカッと赤くなった。



「今更何言ってるんだよ、協力し合わなくちゃ! みんなでこの部屋から出ようって話したじゃないか」



信がマミを責めるように言うと、
「信用出来ないのは、祐子だけじゃないよ。信も大成も、他の人だって、信用出来る保証なんて、どこにもないじゃない」
と、マミが冷たく言い放つ。



「うわぁ、マジか。でも確かにそうだよなぁ」

「大成、アンタ、私と同中だって記憶が戻ってるんだったら、本当、余計なこと言わないほうが身のためだよ」

「何だよ、脅し?」



マミはうすら笑いを浮かべて、
「私はあんたが言うように悪い奴だもん。『ひとりだけ』助かる枠があるなら、私は全力でその枠を奪う」
と呟き、
「『ひとりだけ』助からないなら、私は私の気に入らない奴を躊躇(ちゅうちょ)なく選んでやる」
なんて言い出した。
< 27 / 59 >

この作品をシェア

pagetop