ひとりだけ

私以外の、全員がゾッとしているようだった。

そう、私以外の。



(どっちかというと、私もそう思っているかもなぁ)
と思っているから、私は特にゾッともしない。



私は、助かりたい。

はじめから他の人達を疑い、信用もしていなかったし。

仮に自分を犠牲にするとしても、それほどの価値がこの人達にあるのかどうかも疑問だ。

そう思っている。



……でも、マミは。

本性を晒して。

警告したんだ、と思った。



他の人達を信用し過ぎているのは、大成だ。

彼は思ったことをすぐに口にする。

(はた)から見ていても危ない。

利用されかねない。

彼が『戦い』に『向いていない』と言っていたのは、確かに頷ける。



この場で他の人に嫌われるようなことを言うのは、大きなリスクなのに。

嫌われてしまえば、『ひとりだけ』助からない状況があったとして、その時に選ばれやすくなるのに。



マミはそういうリスクを背負ってまで、大成のために警告した。

『余計なことは言わないほうが身のためだ』と脅しながらも、彼のために警告したんだ。

自分を犠牲にしたんだ。
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