ひとりだけ
意外な展開に、みんなはきょとんとしている。
マミは、泣いている彼女を見ることもなく、
「あの人の名前は、小泉 彩綾。私は、……彼女を知っている」
と、呟いた。
(!?)
知っている?
記憶があるってこと?
「どうしてマミは、他の人の名前まで覚えているの? 私は、私以外の誰のことも覚えていないのに」
「祐子、不安なのはわかるけれど、静かに聞いて。私達は相当やばい状況なんだから」
「……?」
マミの言葉に、みんなが集中したことがわかった。
「『ひとりだけ』っていう小説があるの、知らない?」
「えっ、何よ、突然……。そんなタイトルの小説、いくらでもありそうだけど」
と、祐子。
「誰の小説?」
と尋ねたのは、信。
「それが……、作家名は一応書いてあったけれど、よく覚えていないの」
「どういうこと?」
「全然、無名の人だから。出版さえされていない」
マミの言葉に大成が笑って、
「じゃあ、どうやって読むんだよ?」
と、尋ねる。
「インターネットの、小説サイトだよ」
と、マミは答えた。