ひとりだけ
「小説サイト?」
と、信。
マミは頷き、
「あの小説……、私は読んだことがあるけれど、何も起こらなかった」
と言った。
「『起こらなかった』? 何か起こるような仕掛けがあるの?」
「わからない。でも、実際、私達はここにいる……」
「ちょっと、わかるように話しなさいよ」
と、祐子が苛立つ。
マミは声を更にひそめて、こう言った。
「出てくるの、この部屋。『ひとりだけ』っていう小説の中に……」
「えっ……?」
「この部屋が、小説の中に出てくる?」
信の顔が、ほんの少しひきつっている。
マミは「信じられないとは思うけど」と前置きをして、
「何にもない部屋、そこで気づく主人公達、壁に血しぶき、部屋の中央の床に血文字。その文字は『ひとりだけ』! どれも小説の中と同じ」
と、言う。
「そんな……」
「主人公達の記憶があやふやってことも、一致するから薄気味悪くて……」
「どんな小説なの? ストーリーは?」
と、祐子が尋ねる。