ひとりだけ
小説
「悪魔?」
と、大成が信じられない、という顔をしている。
「何だよ、それ。お子様が読む感じ?」
「馬鹿にするのはやめて」
と、マミが大成を睨む。
「どうしてその小説を読んだのか、私は覚えていないの。……信や祐子よりは覚えていることはあると思うけど、やっぱりあやふやなんだよ」
(……)
「……あのね、小説の中では、主人公達には役割があった。多分、大成は“記憶を戻す人”だと思うし、私は“伝える人”だと思う。だから覚えていることがあるんだと思う」
マミは祐子を見て、
「祐子は“考える人”かもしれない」
と言う。
「えっ? それはオレじゃなくて?」
と、信。
「悪いけれど、信は違うと思う。信より、祐子のほうが、さっきから考えてくれている」
「……そう、かなぁ?」
納得していない信は、
「だったらオレは?」
と、尋ねた。
「わからない。覚えてないの」
「えっ?」
「“悪魔”と“召喚した人”と、もうひとつ役割があったと思うけれど……、なぜか覚えてなくて」