ひとりだけ
私は彩綾に何をしたんだろう?
理由もなくここにいるなんて、きっとあり得ない。
いじめた?
恋心を踏みにじった?
それを笑った?
どれも全然ピンとこない。
自分のしたことが、思い出せない。
「案外、アンタ、何もしてなくてもここにいるのかもね」
と、マミが大成をからかっている。
「そうかな? いや、ひどいことしてないなら良いんだけどさ」
「同中って共通点があるだけだもんね?」
「いや、オレ、彩綾と話してるよ。色々」
と、大成が言った。
「えっ?」
「思い出してきた。……彩綾が信のことを好きなことも知っているし、マミにいじめられていたことも知っているし、……そうだ、祐子に塾のテストで勝てたことがないって聞いたこともある」
「友達だったの?」
マミの質問に、大成が答えようとしたその時。
「違う……」
と、声がした。
部屋のすみから聞こえた。
彩綾の声らしかった。