ひとりだけ

「えっ」
と、全員が彩綾を見た。



彩綾はその場で立ち上がった。

その顔にはメガネをかけていて、その奥の目は腫れそうなくらい真っ赤になっていて、涙がまだあふれていた。 



私は彼女の顔を見ても、やはり何も思い出せず、知らない人だろうなと思った。


「違う……、友達なんかじゃない」



大成が目を大きくして、
「彩綾、オレ……」
と近づこうとすると、
「来ないで!!」
と、怒鳴る彩綾。



彩綾は真っ赤な目をみんなに向けて、
「あんた達なんか大っ嫌いよ」
と、低い声で言った。



「オレ、何かしたかな? 謝るからさ、彩綾……」



大成が言うと、彩綾は首を振って、
「だったらもう、つきまとわないでよ!!」
と、叫んだ。



つきまとう?

大成が?



「……彩綾、もしかして大成って……」



マミが言い終わらないうちに、彩綾は叫ぶ。



「私のこと、ずっとずっとつきまとってきて!! 本当に嫌だった!! 怖かった!! 気持ち悪いとさえ思ってるんだから!!」
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