ひとりだけ
そんな彩綾がマミを見る。
「何?」
「読んだんでしょう? 『ひとりだけ』っていう小説」
彩綾の質問にマミは頷く。
「そうだよね? だって、私が読むように仕組んだから」
「えっ?」
「アンタを絶対に生き残らせないために、“伝える人”になるように仕組んだの。あの小説を読むように、メッセージで小説の情報を送りつけた。絶対に読むだろうと思ってた」
「なんで私が読むって確証があるの?」
「私がメッセージの誤送を装って添付した小説の情報を、アンタがいじめの材料にするって思ったから。……作家名を見た? 誰だか知らない人だったでしょう?」
マミはゆっくりと、
「彩綾が書いたの?」
と、尋ねた。
彩綾はニッコリ笑って、
「……そう思うんじゃないかって、計算したんだよ。私が書いたのかもしれない、と思ったら、アンタは絶対にからかいの材料にするし、もしくは脅してくるかもしれない」
と、言い放った。
そして、こう言った。
「誰が書いたのかは、私も知らないよ。だけど利用させてもらった」