ひとりだけ
私は驚いた。
そんなことを人生が終わろうとしている時に、気にする人は今までいなかったから。
「……面白いね、あなた」
私が笑うと、全員が肩をビクッと震わせて、もう背中と壁はくっついているというのに、後ずさっている。
「『ひとりだけ』って書いたのは、私。だって面白いでしょう? 意味がありそうな言葉を床に書いておくだけで、みんな怖がるんだから」
「意味なんてないってこと!?」
「そうだと思ってもらっても構わないよ。でも書いた当初は、こう思っていた」
「!?」
「『ひとりだけ』、“悪魔”がまぎれている」
「……!?」
「みんなが推理していたことを正解にしたって、別にいいんだ。特に意味なんてないから」
「……っ」
「『ひとりだけ』違う、『ひとりだけ』助かる、……どれも正解でいいんだ」
私は彩綾を見る。
「みんなを召喚した時、みんながすぐに私を疑うのは面白くないから、彩綾、あなただけ違う服装にした」
「……!」