ひとりだけ

「『ひとりだけ』が多く当てはまるあなたが疑われたら、面白いかなって思って」

「面白いだなんて……っ!」

「だけど、私にはどうしても越えられない壁がある」



マミが勝ち気な瞳で私を睨み、
「何よっ!?」
と、問いかける。



「……記憶」
と、私は答える。



「記憶?」



大成が不思議そうに聞いてきた。



「この部屋ではどうしても記憶があやふやになる。私であっても、そのルールには抗えない。だから、私も私が“悪魔”であると、覚えていられないんだ」

「何だよ、それ……」

「まぁ、あやふやな記憶の中、みんなと推理していくのは、楽しくもあるよ」
と、私は笑う。



「この部屋にいると記憶があやふやになるの?」
と、祐子が聞いてくる。



「だったらどうして彩綾は、記憶があやふやじゃなかったの!?」



私は祐子の質問に、ほんの少し嫌気がさしてきた。

色々聞いてきてやっぱり苦手だな、と改めて思う。



「恨む気持ちが強いから」
と、私の代わりに彩綾が答える。
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