ひとりだけ
おわりに
……みんな、食べられてしまったんですよ。
そう、あの人でさえ。
生き残ったのは、オレだけです。
だけど、おかしいんです。
意識が曖昧な気がします。
もう、何も考えられないんです。
そうか、これが“器”なんですね。
傷つけなければ良かった、と思います。
後悔しても、もう遅いんですが。
こんな思いをするくらいに。
オレは恨まれていたんですよね……。
部屋の中には、もうオレ以外に誰もいません。
壁に飛び散った血しぶき。
床に書かれた血文字。
あぁ。
どんどん頭がぼんやりしてきます。
もう一度、あんな思いをしなくちゃいけないのかと思うと、このまま目を覚ましたくなんかないです。
もし。
あなたが呼ばれたら。
絶対に気をつけてください。
決して、顔をあげないで。
声に、耳を貸さないで。
この部屋にあなたが呼ばれないことを。
オレは切に願っています…………。
ーーー完ーーー