ひとりだけ
「何だよ、これ!」
と沈黙を破り、大声を出したのは、見るからに反抗期真っ只中な、髪の毛を金髪に染めた男性だった。
「血!? げっ! なんでだよ、オレの服に血がついてるじゃん!!」
「……大声を出さないでよ」
と眉間にシワを寄せているのは、利発そうなショートヘアの女性。
ショートヘアは、
「私の服にも血がついているけれど、私は無傷だから、あなたもそうなんじゃないの? 服に血がついてるだけだよ」
と、うっとうしそうに続けて、さらにこう言った。
「ほら、あの人の手だって、真っ赤に染まっているじゃない」
私を指差す。
私は金髪も、ショートヘアも知らない、と密かに確認しつつ、金髪に向けて両手を見せた。
「げっ! 最悪じゃん、それ!! 手に血がついてるとか、マジ耐えらんない!!」
金髪は私に、
「怪我してるんじゃないんだよな?」
と、心配そうに確かめる。
私が頷くと、
「うわー、自分以外の血とか、耐えらんないわー、マジで!」
と、盛大に顔をしかめた。