ひとりだけ
私が床の血文字を指差すと、金髪も短く、
「うわぁっ!」
と、悲鳴のような驚きの声をあげ、
「最悪……! マジで! この血って、これでついてたのかぁ!」
と、自分の服を拳でゴシゴシ拭った。
「『ひとりだけ』って書いてある……」
銀縁メガネの男性が血文字を見てそう言うと、金髪は怯えたような声でこう言った。
「うわぁ、キモいから……!!マジキモいって!!」
その反応から、この血文字は金髪が書いたのではないな、と思った。
きっと探るような目つきのあの女性も違う。
ふたりの怯えたような驚きは、とても演技とは思えなかった。
(そう思うと、書いた可能性があるのは泣いている女性、ショートヘア、銀縁メガネ……)
もしかしたら、全員違うということだってあり得る。
元から書いてあった、という可能性。
血文字を見ようとして、私は部屋の中央に移動する。
こすれて消えかかった部分があるものの、乾燥しているようにも見える。
「そんなの、よく間近で見られますね」